○ そ れ か ら

○ 2 ○
「なんで!あなたは!ちゃんと仕事しないんですか!!??」
「・・・・・・・・・・・・」
「ちょっと!!聞いてるんですか!?」
「・・・・・・あ?ごめん、聞いてなかった」
仕事に集中しようとする。しかし、出来ない。
なにかしようとすると、それが失敗を呼び、失敗すると、それがまた失敗を呼ぶ。
まさしく泥沼。そんな言葉がお似合いだ。
というか、この状況で仕事をちゃんとこなすのには、ちょっと無理があった。

「・・・・・・記憶を取り戻した後、」彼女はそう言う風に話し始めた。
「なんで私がこの星に来たのかがわからなかった。でも、いまはなんとなくわかるの」
「この星に来た理由。それは、わたしがこの星で生まれ、育ったから」
「・・・・・・・・・・・・・はい?」
たしか、雛は違う星のヒトなんだよな?
「正確には、違う星なの。もう、いまのきれいな地球の面影は、陰も形も無いくらいに荒廃してしまった地球が、私の故郷」
「原因は、西暦で言うと2420年に起きた、戦争。私たちは、それを『聖戦』とか、『希戦』とかいう風に呼んでいた」
「その戦争で使われたのが、今の時代でも問題になってるでしょ?核。そう、やつらは核弾頭を使い出したの」
そういって、神妙な顔で紡ぎ出される言葉を、オレはやはり神妙な面持ちで聞いていた。
「・・・やつらって?」
「・・・・・・コレは言えない」
そう言った雛の肩は、震えているようだった。
「ん、言いたくないことは言わなくていいよ」
「ん。それで、私たち・・・・・・連合軍のほうは、核弾頭を使用した元凶を探し出した。それで、あのとき、過去に戻ってデータを手に入れるために、当時学生で、なにも知らなくて、記憶を忘れさせやすい私と、すでに軍の諜報役として戦争でも一役も二役も買っていた宇海がこの時代に来た」
・・・・・・重い。なんて重い話題だ。ここまで深刻だとは思っていなかった。
「予定どおり記憶を忘れさせられた私は、普通の学生として生活した。中学生からだから、5年間かしら」
「・・・そうだな。そして、高校生になって、オレと出会った」
「うん」

話はまだまだ続きそうなので、とりあえず一時休憩と言うことで、風呂に入った。
でも、いくら熱いシャワーを浴びても、この胸のもやもやは取れない。むしろ、もがくだけで、どんどんそのもやは広がっていっているような気がする。
本当のことを話すのはとてもいい事だ。でも、本当のことが、時として残酷なほど相手を悩ませることがあるのも事実だ。
どうやら、『残酷な〜』のほうに当てはまってしまったようだ。
頭が重い。

「さて、本題に入るね」
「あぁ」
そこだ。なぜ、俺の記憶だけが残ってしまったのか。なんで、雛は俺の記憶だけを消さないで行ってしまったのか。
「じつは、あれは昔の人にしか効かないの。アレが創られた時代のヒトに使っても、なんの意味も持たないのよ。もちろん、一瞬意識を飛ばすくらいなら出来るんだけどね」
なるほど。・・・・・・・・・・・・・ん?
「ちょっとマテ・・・・・・それって・・・・・・」
「そう。つまり、あなたは未来から来たヒトだったってこと」

・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「んだと〜〜〜〜〜!!!!!?????」
「いや、んだと〜!!!???とか私に言われても困るんだけどね」
・・・おれが?未来から来たヒト?冗談じゃない、そんなのは信じないぞ?
「後から調べてわかったことなんだけど、実は未来で行方不明になってるヒトが一人だけいたのよ」
「血液型はAB型、男。まさしくあなたにぴったりじゃない?」
「・・・・・・・・・・・・」
「どうしたの?」
「そんなの」
「え?」
「そんなのいきなり言われて突然信用できるか〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!」
「きゃ」
雛は椅子からびっくりして落ちてしまった。しかし、動揺したようでもなく、続ける。
「でもね、あなたが未来から来たヒトだって言う証拠、あるの」
「は?どれさ?」
「未来から来たヒトは、現代のヒトとは恋に陥らないの、時間の軸に干渉することになるから、だけど、その時代に無関係な二人だったら、なにをやってもOKなわけ」
「なにやってもって、なにを?」
「アホ」
「ごもっとも」
「だから、あなたは未来の人間。私たちの仲間。記憶消されてるだけだから、普通でいれるわけよ」
深い。なんか果てしなく深い。そして限りなく重い。
雛は未来の地球から来たヒトで、未来の地球は戦争でボロボロで、しかもおれは未来の人間?・・・???
「頭痛い」
「ごもっとも」
「で、おれは別になにもしなくても言い訳?」
「うぅん・・・いいんじゃん?特になんも言われてないし」
「んなアバウトな・・・」
「さて、お風呂入って寝よう」
「ヲイ」
かってに話を切り上げようとする雛の首根っこをつかむ。ちょっと苦しそうだ。
「ゲホゲホ・・・もういいっしょ?べつにこの生活が壊れるわけじゃないし」
「・・・・・・本当にか?」
「命賭けて誓うわ」
「わかった」

ボ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・・・
「だぁぁぁぁぁ!!!仕事しろ!!」
ボ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・・・
「仕事しろっちゅーに!!!」
ボ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・・・
「パイプ椅子でしこたま殴りつけますよ?」
「冗談だ、仕事するから許してくれ」
本当にパイプ椅子を構えている彩をなんとか諌めると、おれはペンを取って机に向かった。
が、仕事に身が入らない。まぁ当然と言えば当然だ

やっと仕事が終わる。その日はほとんど仕事と言う仕事はしてなかった。
それをどうやら課長に見られていたようで、家に帰ってから電話でしこたま怒られた。




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