○ そ れ か ら

○ 1 ○
「今日こそは!仕事をしてもらいますからね!!!」
会社に着いて、まず言われた言葉は、これだった。
突然言われても困る。常日頃から仕事はちゃんとやっている。つもりだ。
同僚で後輩の枚方 彩(ひらかた あや)。いつも俺に注意してくるが、一応俺よりも職位は下だ。
俺は一応平社員の上、彼女は平。まぁ、たいした差ではないが。
「普段からクソ真面目にしてるじゃないか」
「普段の生活ぶりを見てどこが!どう!真面目なんですか!?」
きょうはなかなか引き下がらない。
「ん?ところで君は仕事しなくてもいいのか?」
「私の仕事は先輩の面倒を見ることです!」
「そんな自身満々に言われると俺自身無くしてこの仕事辞めることになって家族を養えなくなって路上のゴミと化して物乞いになって君の前に現れてやるぞ〜」
「辞めてください汚らしい」
「グハ」
「ん〜、オホン」
気がつくと、目の前に専務がいる。これはなかなか危険な雰囲気を醸し出してるんじゃないか?
「スミマセン、ちょっとトイレへ…」
「待たんか」
声は笑っているが、目は笑っていない。かなり恐い。
危険度MAXだ。これは早急に逃げたほうがイイ。そうしたほうがいい。
「こんなときは…ダッシュ!!」
「ぁ、こらまて!」
いや、高校時代50m走で6秒5だった俺に追いつけるはずがない。
と思ったら、彩が隣にいる。なぜだ?
「高校時代50m走で6秒4だった私に勝てるとでも思ったんですか!?」
「たった0.1秒の差だ」
「その0.1秒が大きいんですよ!」
結局、捕まって専務に延々と仕事終了時刻まで説教をかまされた。

「あぁぁぁ、、、ただいま」
「おかえり…きょうも大分お疲れね」
やっと家に帰った夜7時。雛は夕食を準備していた。
おれの背広を受け取ると、クローゼットにかける。もう見慣れた風景だ。
「そういえば、小説のほうは上手く書けてるの?」
「まあまあってところかな。ほら、まだ聞いてない話もあるし」
そういうと、テーブルにつく。「いただきます」と言って食事をとる光景も、この家ではもう当たり前になってきた。
最近は、家族がそろわないことも多々あると聞くからな。
「うんうん、いい傾向だ」
「いきなりナニを言い出すの?」
「ん?キニシナーイキニシナーイ」
「片言の日本語を話す外国人の真似はやめなさい」
そのひとことで黙らされるところも相変わらず。
「そうだ」
「え?」
「聞かせて欲しい話がある」
「なに?」
聞きたいこととは、あのとき、なぜおれの記憶だけ消えなかったのかと言うことだ。
おれの周りの人間は、雛と宇海のことは完全に頭からなかった。なのに、あの場にいたおれだけが今でもハッキリと思い出せる。
その理由はなぜだろうか?
「・・・・・・」
なんともいえない沈黙。おれはこういう雰囲気が嫌いだ。
「いや、言いたくないならいわなくていいや」
「いいよ」
「え?」
「話してあげるよ」
「ん、そんなに深刻そうな顔をしなくても、普通に話せばいいとおもうけどな」
「深刻な話なのよ」
「そなんすか」
「そなんす」

そして雛は話し始めた。
あのとき、なぜおれの記憶だけが残ったのかを・・・


to be continued...




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